日本のEC利用動向とAmazon・楽天の概要

コラム

日本で新たに商品を販売する際に、ECでの販売についても検討されるかと思います。特に日本のEC市場においては、Amazonや楽天市場などのECモールが大きな存在となっています。しかし、それぞれのECモールには特徴があり、どのECモールで商品を販売するか迷うところです。

そこで今回は、これから日本でEC販売を考えている方や、ECモール出店を考えている方に、日本のEC利用動向や代表的なECモールであるAmazon・楽天の概要をまとめました。

日本のEC市場の概要

2021年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、20.7兆円(前年比7.35%増)まで拡大しています。分野別でのBtoC-ECの市場推移を見ると、物販系分野が特に堅調に拡大していることが分かります。

BtoC-EC市場規模の推移(単位:億円)

経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果」より引用

また、日本のEC化率(全ての取引金額に対する、EC取引の市場規模の割合)を見ても、BtoC-ECで8.78%(前年比0.7ポイント増)と増加傾向にあり、ECの比率が徐々に高まってきています。

BtoC-ECの市場規模及び各分野の伸長率

経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果」より引用

物販系の市場規模の内訳を見ると、「食品、飲料、酒類」(2兆5,199億円)、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」(2兆4,584億円)、「衣類・服装雑貨等」(2兆4,279億円)、「生活雑貨、家具、インテリア」(2兆2,752億円)となっています。

EC化率については、どの分野においても上昇しているものの、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」(38.13%)、「生活雑貨、家具、インテリア」(28.25%)、「衣類・服装雑貨等」(21.15%)においては特にEC化が進んでいる一方、「食品、飲料、酒類」(3.77%)は低水準に留まっています。

物販系分野のBtoC-EC市場規模

経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果」より引用

日本のECモールの概要

日本のECモール(複数の企業やショップが出店するショッピングモール型のECサイト)では、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどが代表的です。

日本の主要なECモールの視聴者数を見ると、楽天市場(5,104万人)、Amazon(4,729万人)、Yahoo!ショッピング(2,288万人)の順となっており、日本では特に楽天とAmazonの二強であることが分かります。

2021年12月 Monthly Total レポート トータルデジタル視聴者数Top5 オンラインモール

ニールセン デジタル株式会社「ニールセン、デジタルコンテンツ視聴率のMonthly Totalレポートによる オンラインモールのサービス利用状況を発表」より引用

各ECモールの売上高や出店数の数字については非開示となっており、各メディアが推測している数字にはバラツキがありますが、以下の数字は一つの参考になるかと思います。ここからも楽天市場とAmazonの流通額が特に大きいことが分かります。

楽天市場AmazonYahoo!
ショッピング
売上
(流通額)
3兆9,000億円
※1
3兆4,238億円
(2019年度 推測)
8,901億円
※2
出店数51,815
2020年10月1日時点
178,000
2015年6月時点
872,289
2019年3月末時点
出品点数2.7億
2020年10月1日時点
4億超
※3
2.8億
2017年12月時点
※1 トラベルなどの宿泊流通、GORAによるゴルフ流通、ビジネス、楽天Direct、楽天デリバリー、ラクマ、クーポンなどの値を含む2019年度
※2 Yahoo!ショッピング、LOHACO、(株)チャーム、PayPayモール、(株)ZOZO《※ZOZOTOWN本店を除く》の取扱高を含む2019年度
※3 Amazon.co.jpに出品する日本の中小規模の販売事業者 集計期間:2019年6月1日から2020年5月31日まで
※MakeShop「【決定版】ヤフー・楽天・Amazonに出店するならどれがお得か徹底比較」より引用

出店数で比較すると、Yahoo!ショッピングが最も多いですが、これはYahoo!ショッピングは出店費用がかからないためです。実際、稼働店舗数はAmazonよりも少ないと言われています。

なお、同じECモールでも、楽天市場はテナント型、Amazonはマーケットプレイス型という違いがあります。

  • テナント型ECモール
    ECモールサイト内にショップを出店するタイプ。日本の代表例として「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」が挙げられます。
    ECモール側はあくまでもスペースを借りるだけで、実際の店舗運営、商品受注、在庫管理などは出店者側が行います。
    「出店」するため、店舗としての独自性を出しやすいです。
  • マーケットプレイス型ECモール
    ECモールに商品を置いてもらうタイプ。日本の代表例として「Amazon」が挙げられます。
    テナント型が「出店」であるのに対し、マーケットプレイス型は「出品」という形となります。商品データ自体はECモール側が管理します。
    あくまで「出品」するだけなので、店舗の独自性を出すことはできません。

日本のECモールの利用者層

日本で最も利用されている楽天とAmazonについて、ユーザー層の違いを見ていきたいと思います。

楽天・Amazon利用者の性別・年齢層

まず、Amazonユーザーは男性の割合が高い一方、楽天ユーザーは女性の割合が高いと言われています。

次に、年齢層の違いについて、女性ではどの年代でも楽天市場のリーチが最も高い一方、男性の18-34歳ではAmazonのリーチが高くなっています(ニールセン デジタル株式会社調べ)。他の調査を見ても、楽天市場の利用者の年齢層の方が、Amazonよりもやや高そうです。

2021年4月 Monthly Totalレポート トータルデジタル視聴者数Top3 オンラインショッピングカテゴリー 性年代別リーチ%

ECのミカタ「視聴者数1位は楽天、2位はAmazon ニールセンデジタルがECサービス利用状況レポートを公表」より引用

楽天・Amazon利用者の興味関心

興味関心のデータでは、Amazonユーザーは、「PC・家電」、「インターネット」、「アニメ・漫画」、「ゲーム」の割合が高くなっています。一方、楽天ユーザーは、「旅行・レジャー」と回答した人の割合が高くなっています(参考:ブランドデータバンク「Amazon・楽天ユーザーを比較分析!消費傾向や価値観の違いとは?」)。楽天には「楽天トラベル」などのサービスもあるためか、Amazonユーザーの方がインドアな傾向にあり、楽天ユーザーの方がアウトドアな傾向があるようです。

また、Amazonでよく閲覧されているのは、「本」、「パソコン・周辺機器」、「家電&カメラ」、「ホーム&キッチン」となっているようです。一方、楽天で閲覧が多いのは、「インテリア・寝具・収納」、「食品」、「花・ガーデン・DIY」、「日用品雑貨・文房具・手芸」となっています(参考:マナミナ「ネット検索で Google を使う人、Yahoo! を使う人の特徴を分析してみた」)。

楽天・Amazon利用者の定性的意見

最後に、Amazonと楽天を使い分ける理由について、利用者の定性的な意見を見ていきたいと思います。

Amazonを使う理由としては、「送料無料」「スピード配送」「プライム会員の特典」など、利便性を評価する意見が多くあがった。急ぎの買い物かどうかや、他のサイトのキャンペーン状況などによって、Amazon以外のECサイトと使い分けている実態も浮かび上がった。

楽天市場を使う理由は、ポイント還元率の高さや楽天スーパーポイントの貯まりやすさ、各種セール、品ぞろえの豊富さなど、買い物を楽しめる点を評価する意見が多い。一方、急ぎの買い物ではAmazonを使うという声もあがっている。

ネットショップ担当者フォーラム「【ECサイト利用状況】Amazonと楽天市場、消費者はどう使い分けている?

Amazonの特徴の一つは、フルフィルメントになります。フルフィルメントとは、商品の保管から注文処理、配送、返品に関するカスタマーサービスまでをAmazonが全て代行するサービスのことです。利用者もAmazonの配送かどうかを重視しており、Amazonによるスピード配送や利便性に対する信頼感は高くなっています。このため、Amazonで出品する際には、フルフィルメントの利用有無が重要な検討事項となります。

一方、楽天市場の強みは、楽天ポイントが利用できることにあります。楽天は日本で様々なサービスを提供しており、楽天市場においても楽天ポイントを貯めたり使用したりすることができます。このため、楽天ポイントを普段から利用しているユーザーは、楽天での買い物を好む傾向があります。

日本のECモールの出店料・手数料

ECモールの出店にはさまざまな費用がかかります。今回は楽天とAmazonの出店料・手数料を見ていきたいと思います。

楽天市場の出店費用と手数料

がんばれ!プランスタンダードプランメガショッププラン
こんな人におすすめネットショップ運営の
ご経験が少ない
目標とする月商が
140万円以上
商品数や画像量が
多く必要
月額出店料
(税別)
19,500円/月
年間一括払
50,000円/月
半年ごとの2回分割払
100,000円/月
半年ごとの2回分割払
システム
利用料
(税別)
月間売上高の
3.5~7.0%
月間売上高の
2.0~4.5%
月間売上高の
2.0~4.5%
登録可能
商品数
5,000商品20,000商品無制限
参考:楽天市場「出店プランと費用・料金体系

楽天市場の出店では、まずは初期費用が6万円かかります。出店費用は3つのプランから選ぶことができ、最も安い「がんばれ!プラン」では月額19,500円です。

Amazonの出店費用と手数料

大口出品小口出品
月間登録料4,900円/月無料
基本成約料無料100円/回
販売手数料8%~15%8%~15%
参考:Amazon「料金プラン、配送手数料、料金シミュレーター

Amazonでは「大口出品」と「小口出品」の2つの出店方法があります。小口出品は月額無料で出品できますが、1回の販売当たり100円の費用がかかるため、毎月50点以上の販売が見込めるのであれば、大口出品の方が費用を抑えることができます。

【まとめ】楽天・Amazon出店の比較

楽天市場Amazon
ECモールの種類テナント型ECモール
店舗単位での出店
マーケットプレイス型ECモール
商品単位での出品
出店審査厳しい簡単
最初に必要な作業店舗ページ+商品ページの作成商品ページの作成
初期費用高い低い
月額費用高い低い
変動費用(販売手数料)低い高い
まとめ店舗ページや商品ページを作る必要があるため、最初に必要な作業は多い。
また初期費用や月額費用もAmazonと比較して高い。一方、売上に連動する変動費用は比較的低い。
店舗としての独自性を出すことができる。
出品は楽天と比較して簡単。
また初期費用や月額費用も低い。一方、売上に連動する変動費用は比較的高い。
店舗の独自性を出すことはできない。

楽天はテナント型ECモールのため、商品ページのほか、店舗ページも作成する必要があり、出店に必要な作業はAmazonよりも多いです。また、店舗ページや商品ページの作成にHTMLの知識が必要になります。費用については、初期費用や月額費用は高い一方、システム利用料は比較的低くなっています。

Amazonはマーケットプレイス型ECモールのため、商品単位での出品となります。店舗の独自性を出すことは難しいですが、出品自体は比較的簡単でHTMLの知識なども必要ありません。費用については初期費用はかからず、月額費用も低い一方、販売手数料率は比較的高めとなっています。

以上のことから、試しに数点出品したいという場合にはAmazonの方が向いているかと思います。一方、店舗としてのブランディングを中長期的に行っていきたい場合には楽天市場の方がおすすめです。

最後に

今回は、日本のEC利用動向と、代表的なECモールであるAmazonや楽天の特徴についてまとめました。

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