食器の輸入手続きについて
食器は食品に直接触れるため、販売などの営業目的で輸入する場合には、食品等輸入届出書の手続きが必要になります。
また、食器に使用されている材質(ガラス・陶磁器・ホウロウ引き、合成樹脂、ゴム、金属管など)によって規格基準が定められており、材質・用途別に自主検査が必要となります。
食器の輸入時・販売時に関連する主な規制は以下の通りです。
- 輸入時の規制
- 食品等輸入届出書:販売または営業上使用する目的で食器等を輸入する場合、「食品等輸入届出書」を届け出る必要があります。
- 規格基準:食品衛生法の規格基準(器具および容器包装)が定められた材質の食器を輸入する場合、輸入者は、厚生労働大臣の登録を受けた検査機関または輸出国の公的検査機関の検査成績書等を提出する必要があります。
- 販売時の規制
- 家庭用品品質表示法
- プラスチック製の食器:プラスチック製の食器は「合成樹脂加工品品質表示規程」で「食事用、食卓または台所用の器具」に該当し、原料樹脂や耐熱温度などの表示義務があります。
- ガラス製の食器:ガラス製食器は「雑貨工業品品質表示規程」で表示義務事項が定められています。
- 家庭用品品質表示法
今回の記事では、食器の輸入時に必要となる手続きについてみていきたいと思います。
なお、食器の輸入にあたっては、以下のサイトが参考になります。
- JETRO「食器の輸入手続き:日本」
- mipro「食品用器具 輸入の手引き」
- mipro「食器の輸入・販売」
- 厚生労働省「食品衛生法に基づく輸入手続」
食品等輸入届出が必要となる食器の輸入
販売・営業のために食器を輸入する場合には食品等輸入届出が必要になります。一方、個人での使用が目的であれば、食品等輸入届出は必要ありません。
また、食品等輸入届出が必要となる食器に該当するかについては、「食品に直接接触するかどうか」が判断基準になります。
例えば、箸は食品に直接接触しますが、箸置きは食品に直接接触しないため、箸置きは食品衛生法の対象外となります。
以下に食品等輸入届出必要の有無をまとめていますが、判断が難しいものは検疫所に確認した方が安心です。
輸入目的
- 販売または営業上の使用(多数の人に無償で配布する場合も含む):食品等輸入届出が必要
- 個人での使用・社内検討用・展示用:届出は不要
届出が必要となる食器
- 食器:カップ・皿・タンブラー・はし・スプーン・ナイフ・フォーク・哺乳用具・ストローなど
- 調理器具:包丁・まな板・なべ・フライパン・ボウル・おたまなど
- キッチン家電:コーヒーメーカーの水が通るチューブやコーヒー豆をストックする部分、ミルの部分・電子ジャー窯部分・ミキサーなど
食器輸入時に検疫所が指示する検査一覧
検疫所が指示する検査には3種類あります。食器類の輸入販売において重要となるのは、主に自主検査になります。
自主検査(検査費用:輸入者が負担)
器具・容器包装で食品衛生法の規格基準に適合していることを確認する必要があるものは、初回輸入時の検査が必須となります。検査は、輸入者が検査機関に依頼し、費用を負担します。
モニタリング検査(検査費用:国が負担)
食品衛生上の状況について幅広く監視し、必要に応じて輸入時検査を強化する等の対策を目的として、国が年間計画に基づいて実施する検査です。
命令検査(検査費用:輸入者が負担)
厚生労働大臣が食品衛生法違反となる可能性が高いと判断したときに、食品衛生法第26条第3項に基づき輸入者に検査の実施を命ずる措置です。
自主検査の方法
食器類の自主検査の方法には、実際に日本に届いた貨物からサンプルを抜き取って行う検査、届出前にサンプルを日本に輸入して行う検査、海外の登録済み公的検査機関で事前に行う検査の3つの方法があります。
届出後の貨物から検査用サンプルを採取・日本の検査機関で実施
輸入届出後に輸入者が登録検査機関に検査を依頼、届出の貨物から検査用サンプルを採集して検査を行う方法です。
日本に貨物が届いた後に検査を行うため、万が一検査で不適合があった場合に大きな損失が発生します。一方、日本で検査を行うため、海外の製造メーカーに検査を依頼する手間がなく、かつサンプルの輸入もないため輸入コストを抑えることができます。
事前にサンプルを輸入・日本の検査機関で実施
販売用貨物を輸入する前に検査用のサンプルを輸入して検査を行う方法です。
少量のサンプルで検査を行うため、不適合商品の廃棄・積戻しのリスクを回避することができます。一方、一度サンプルを輸入した後に販売用貨物を再度輸入することになるため、検査で問題がない場合は輸入コストが大きくなります。
輸入前に海外の公的検査機関で事前に実施
輸出国の外国公的検査機関にサンプルを送付して、現地で検査を行う方法です。
現地の製造メーカーに必要十分な検査を依頼する必要はありますが、販売用貨物輸入前に日本に輸入可能かどうか把握することができ、サンプルの輸入コストも必要ありません。
なお、外国公的検査機関は、以下の厚生労働省のホームページで確認することができます。
厚生労働省「外国公的検査機関一覧」
食器を輸入する際の注意点
直接食品に触れる部品全ての検査が必要
食器を輸入する際、特に自主検査にかかる注意点として、食品に直接触れる部品全ての検査が必要となります。
例えば、水筒であれば水筒本体の内側の検査ももちろん必要ですが、食品(水筒であれば飲み物)が直接接触するフタの内側の部分などの検査も必要となります。
そのため、初めて食器を輸入する際は、食器の構造を確認して、どの部分の検査が必要か把握されることをおすすめします。
一方、検査が必要となるのは食品に直接接触する部分のみですので、食品に触れない水筒の外側のケース等は検査が不要です。
材質・形状・色が違う場合はそれぞれ検査が必要
材質が違う場合もそれぞれ検査が必要ですが、材質が同じ場合においても食品に直接接触する部分の形状や色が違う場合はそれぞれの検査が必要となります。色違いの食器を輸入する際には、すべての色で検査が必要となる可能性があるため、思わぬコストとなりえます。
なお、食品に接触する部分の材質・形状・色が違う場合のみ検査が必要となるため、例えば食品に接触しない部分のみ色が異なり、内側の形状や色が同じ場合には、その旨を画像とともに添付することで、検査を省略することができます。
自主検査が必要なのは初回のみ
食器類の自主検査は一回のみ実施すればよいため、初回輸入時の「試験成績証明書」を二回目以降も使用することができます。
最後に
今回は、食器類の輸入手続きと関連する規制・法令をまとめました。
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